2023.09.13
この記事では、EC物流の仕組みから業務内容、EC物流の一連の流れについて解説します。
「EC物流とは何か?」
「どういうことが行なわれているのか?」
「EC物流のメリット・デメリットは何か?」
などのことが気になる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
EC物流とは、EC事業の物流業務全体のことを言います。
ユーザーがウェブサイトなどで商品を購入した際に、その商品をユーザーの元へ届けるまでの一連の流れを包括的に指す言葉です。
EC物流は、ECのモノの流れを担う部分であり、注文された商品をユーザーに届けるために必要なプロセスのため、ECサイトの運営にとって必要不可欠なものとなっています。
まずは注文受付から始まります。ユーザーがオンラインで商品を購入すると、その注文情報がEC事業者に伝わります。
次に、出荷準備を行ないます。注文された商品を在庫からピッキングし、商品の大きさや種類を考慮のうえ、最適な資材、やり方で梱包します。
次に、配送手配を行ない、配送業者に商品を引き渡します。そして、ユーザーに商品が届くことで、物流の一連の流れが完了します。
なお、この流れの中で商品が破損した場合や、ユーザーが商品を返品したい場合には、その対応も行ないます。
EC物流の最大の目的は、ユーザーが購入した商品をスムーズに、そして早く手元に届けることです。そのためには、適切な在庫管理と迅速な配送が求められます。
そうした物流体制は、ユーザー満足度を左右します。例えば、配送が遅延したり、商品が破損して届いたりすると、ユーザーはそのECサイトからの再購入をためらう可能性があります。また、ユーザーからの返品要望に対する対応も、ユーザー満足度に大きく影響します。
高品質な物流サービスを提供できる体制を整備しておくと、ユーザー満足度の向上につながります。結果、良いクチコミが広がったり、リピートしてくれたりする可能性が上がります。
その点、EC物流はEC事業に大きく影響を与えるほど重要なものであると言えます。
では、どうすればユーザー満足度が高くなるEC物流サービスを提供できるか。
ポイントを3つご紹介します。
在庫管理が不徹底で品切れが起きてしまうと、ユーザーにとっては購入しようとした商品が手に入らない、という不満を生むことにつながります。そのため、常に需要予測を実施し、適切な量の在庫を確保するようにしましょう。
配送業者と言うと、どの会社も大差ないと思われがちですが、実は会社ごとで配送スピードや料金、品質などが異なります。そのため、配送業者の選択も、ユーザー満足度の向上に大きく影響します。配送業者の品質や配送スピード、料金などを比較のうえ、最高のサービスを提供する業者を選択することが重要です。
カスタマーサポートは、ユーザーからの問い合わせや返品・返金対応、クレーム処理などに対応するサービスです。カスタマーサポートの構築によって、ユーザーからの返品やクレームにスムーズに、かつ迅速に対応することで、ユーザー満足度を高めることができます。
ここでは、成功事例として高品質なEC物流サービスを提供している会社を2つご紹介します。
Amazonは、戦略的な倉庫配置とAIによる在庫管理、ドローンを活用した配送など、最先端の技術を駆使しています。
これにより、前日に注文した商品が翌日には手元に届くという、他の追随を許さないスピード配送を実現。消費者の満足度を高め、業界での圧倒的な地位を確立しています。
さらに、Amazonは常に物流改善を目指し、ロボットを使った倉庫運用やAIのさらなる活用など、新たな取り組みを積極的に推し進めています。
人員配置や作業フローなどの効率化に成功させた企業として有名です。
商品が一度に大量に注文される「ZOZOSALE」でも、迅速に商品を配送できる体制を整え、消費者からの信頼を勝ち取り、その地位を確立しています。
ZOZOTOWNの事例から、技術的な進化だけでなく、人員の配置や作業フローの見直しも重要であるということがわかります。
成功事例から学べるポイントとしては2つあります。
ひとつが「常に改善を続けること」で、もうひとつが「急激な需要増に対応できる体制をつくること」です。
Amazonはドローン配送やロボットを使った倉庫管理といった新たな取り組みを進めており、これにより、既存の物流システムに満足せず、常に新しいことに挑戦し、進化し続ける姿勢が見られます。物流システムは常に最新の技術を取り入れ、オペレーションも見直すことで、より良いサービスにつながります。
また、ZOZOTOWNの例からは、大量注文に対応できる体制づくりの重要性を学べます。イベントなどで注文が増える時期に対応できず、配送が遅れるとユーザーの信頼を失ってしまいます。急激な需要に対応できる体制を事前に構築しておけば、そうしたリスクを抑えることができます。
EC物流においては、次のような課題もあります。
ひとつずつ説明します。
まず挙げられるのが「コストの増加」です。
コストの増加には、人件費や配送費用、在庫管理費用などが含まれます。
人件費は、繁忙期に人員を増やす必要があることや、作業ミスによる返品対応などで発生します。
また、配送費用は、配送先が多様化することや、段ボールのサイズに合わせて最適化することが難しいことで発生します。
在庫管理費用は、商品の種類や数量が増えることや、保管環境を整えることで発生します。
EC物流のコストを削減するためには、以下のような対策が考えられます。
たとえば、バーコードスキャンやRFID技術を使って在庫管理やピッキング作業を正確に行ったり、WMS(倉庫管理システム)を導入してデータ管理を徹底したりします。
EC物流代行サービスを使って、物流のプロに倉庫作業や配送業務を委託したり、越境ECの場合は国際物流サービスを使って関税や通関などの手続きを任せたりします。
次に挙げられるのが「作業ミスの増加」です。
作業ミスとは、入荷→検品→保管→ピッキング→出荷検品→流通加工→梱包→出荷の各工程で発生するヒューマンエラーのことです。
作業ミスは、次のような原因で発生します。
作業ミスは、ユーザーからのクレームや返品、交換などのトラブルに発展するものです。
また、商品や配送先の間違いは個人情報の漏洩にもつながります。
これらは、EC事業者の信頼性を低下させたり、ユーザーの満足度を低下させたりする要因となります。
さらに、作業ミスによって発生する時間的なロスや追加コストは、利益率を低下させます。
EC事業にとって深刻な問題のため、対策が必要不可欠です。
作業ミスを防ぐためには、次のような対策が有効です。
物流倉庫では、荷物の仕分けや積み込み、出荷などの作業が行なわれますが、これらの作業には正確さが求められます。スタッフは、荷物の種類や数量などを確認し、間違えないように注意しなければなりません。
また、荷物の扱い方や安全対策にも配慮する必要があります。作業内容やルールを理解し、守ることができるように定期的な研修や指導を実施し、教育することが重要になります。
物流倉庫では、照明や温度、湿度などの環境要因が作業ミスに影響することがあります。
たとえば、照明が暗いと荷物のラベルやバーコードが読み取りにくくなりますし、温度や湿度が高いと作業者の体調や集中力が低下します。
これらの環境要因を適切に管理し、スタッフが快適に作業できるように改善しましょう。
物流倉庫では、倉庫管理システムやハンディなどを使用して業務を遂行していますが、これらのシステムは常に最新の状態に保つことが大切です。
古いままでは動作不良を招いたりし、作業ミスやトラブルの原因になります。
3つ目に挙げられるのが「人材不足」です。
物流業界は、慢性的な人材不足に悩まされています。
これにより、業界の発展が遅れたり、社会のニーズに対応できなかったりと、深刻な問題を引き起こしています。
物流の人材不足の原因には、次のようなものが挙げられます。
物流業界全体で悩まされている課題ですが、できる限り人材確保対策を推し進めることが重要になります。
このような人材不足を対策する方法には、次のようなものがあります。
シフトや休憩時間を見直したり、荷物をまとめて載せたり、置き配や宅配ロッカーを利用したりすることで、労働時間を短縮し、従業員の負担を軽減することができます 。
システムを導入することで、在庫管理やピッキングなどが効率的になります。手作業で行なっていた業務時間が減り、ミスを防ぐこともできるため、作業の質を向上させることができます。
繁忙期や急な欠員の際には、人材派遣を利用することで、人手不足を解消することができます。人材派遣では、派遣会社の社員を自社に派遣してもらい、場合によってはそのまま採用することもできます。
EC物流は、オンラインショッピングの普及に伴い、今後も需要が高まります。
その需要に対応するためにも、人材不足は積極的に対策していくことが求められます。
給与や労働環境の改善、物流システムの導入、人材派遣の利用など、さまざまな方法で人材確保に努めることが重要になります。
4つ目に挙げられる課題が「注文ピーク時の遅延や欠品」です。
注文ピーク時とは、季節やイベントなどによって注文数が急増する期間のことで、たとえば、年末年始やバレンタインデー、クリスマスなどがそれにあたります。
注文ピーク時には、通常よりも多くの商品を倉庫から出荷しなければならず、物流業務に大きな負荷がかかります。
結果、次のような問題が発生する可能性があります。
こららの問題は、商品の欠品や配送遅延という形でユーザーに影響を与えます。
欠品や配送遅延は、お客様の満足度を低下させるだけでなく、クレームや返品、キャンセルにつながる可能性があるものです。
また、欠品や配送遅延が繰り返されると、自社のブランドイメージが低下したり、信頼性が損なわれたりする恐れもあります。
注文ピーク時を想定して、欠品や遅延が起きない体制を構築しましょう。
注文ピーク時の遅延や欠品の対策としては、次のような方法があります。
過去のデータや市場動向などをもとに、注文ピーク時にどれだけの商品数が必要になるかを予測し、それに応じて在庫管理や発注計画を立てます。また、人員や資材も必要量を見積もり、事前に確保しておきます。さらに、配送業者とも事前に連携し、配送スケジュールなどを調整します。
システムの導入は、物流業務のスピードや精度を向上させるうえで有効です。たとえば、バーコードやRFIDなどを活用すれば、商品の管理やピッキング作業を効率化できます。また、ロボットやコンベアなどの機械を導入すると、作業の自動化を進められます。さらに、作業オペレーションや標準作業手順書などを見直して、作業の無駄やミスを減らします。
外部委託は、物流業務にかかるコストやリスクを軽減する際に有効な方法です。物流業務を自社で行なう場合は、倉庫の維持費や人件費などがかかりますが、物流業務を外部委託することで、それらのコストを削減することができます。また、物流業務の品質を安定させることも可能です。自社で物流業務に時間や人員を割く必要がなくなるため、EC事業の成長に集中できるところも魅力と言えます。
EC物流の課題は、自社では解決が難しいケースがあります。
そうしたときは、EC物流を外部委託するのがおすすめです。
EC物流を外部委託することには、次のようなメリットがあります。
物流業務には人の手で行なう工程もあります。これにより、人的ミスが起きることも少なくありません。
しかし、ミスはユーザーの満足度やブランドイメージを低下させます。それだけでなく、返品や交換などが起きれば、その対応にもコストや時間がかかってしまいます。つまり、ミスが起きると、さまざまな部分に悪影響が出るわけです。
物流のプロに外部委託すれば、そうした人的ミスが減るため、自社の物流業務に悪影響が出るリスクを軽減できます。
自社で物流業務に対応する場合、倉庫を借りたり、専用の設備を導入したり、人員を確保したりと、多くのリソースを用意しなければなりません。また、物量が増えれば、それに応じてリソースを増やす必要があり、そのぶんコストがかかります。
外部委託すれば、そうしたリソースを割く必要がなくなります。物流業務にリソースを割かなくてよくなるので、EC事業を成長させるための業務に集中することができます。
また、外部委託に際して費用はかかりますが、自社で物流業務に対応することと比較して安く済むことが多いです。
EC物流会社は、EC事業者のニーズに合わせて柔軟に対応してくれます。
たとえば、商品の流通加工(ラッピングやメッセージカードの同梱など)、急な注文増加への対応、配送コストの最適化など、良質なサービスを提供しています。
これらのサービスにより、自社の物流業務の品質が高くなり、結果、ユーザー満足度やリピート率の向上を期待できるようになります。
では、EC物流を外部委託する際、何を基準に物流会社を選定すればいいのか。
物流会社選定でチェックしたいポイントを3つご紹介します。
1つ目はサービス内容の確認です。
EC物流会社には、単純に商品の配送だけ対応しているところから、在庫管理や梱包資材の提供、カスタマーサポート、マーケティング支援など、幅広いサービスを提供しているところまであります。
自社が必要とするサービスを明確にし、それに対応できるEC物流会社を探しましょう。
二つ目は料金体系の比較です。
EC物流会社の料金体系は、基本料金や出荷手数料、保管料金、返品手数料など、さまざまな項目で構成されています。
一方で、一定の出荷数や在庫数に応じて割引を適用しているところもあります。
自社の商品の特性や販売数を考慮したうえで各社を比較し、コストパフォーマンスの良いEC物流会社を選びましょう。
三つ目は、そのEC物流会社の信頼性や評判の確認です。
EC物流会社は、自社の商品やユーザーと直接関わる重要なパートナーです。そのため、配送品質や納期遵守、トラブル対応など、信頼できるサービスを提供しているかどうかは非常に重要なポイントとなります。
インターネットなどで実際にその物流会社を利用したことがある人のクチコミや評判をチェックし、信頼性を確認しましょう。
以上のように、EC物流会社を選ぶ際には、サービス内容や料金体系、信頼性や評判などを総合的に判断する必要があります。
自社の状況に合ったEC物流会社を見つけ、円滑なEC事業を提供していきましょう。
EC物流は、ユーザー満足度を左右する要因のため、EC事業を成長させるうえで重要なポイントとなります。万全の物流体制を築くことのメリットは非常に大きいと言えます。
ただし、EC物流には多くの課題もあります。その課題を克服し、高品質な物流サービスを提供していきましょう。
ALL FOR ONE
ONE FOR ALL
WE RESPECT YOU.